文庫化する本はどう決める!?出版社に電話取材してみた その2

こんばんは、新刊JP編集部ヤマダです。

前回のエントリーでチュツオーラの名前を出しましたが、


毎週、各書店さんにお願いして、オススメ書籍を紹介してもらう新刊JPの企画

書店員が選ぶ『私の3冊』


紀伊國屋書店ピクウィック・クラブさん紀伊國屋書店新宿本店の店員さん達による文学愛好者の団体)がタイミングよくチュツオーラの『やし酒飲み』を紹介してくれていました。




ちなみにチュツオーラはナイジェリアの作家です。
魔術的リアリズムの作家と言われていますが、ジャンルの括りでチュツオーラを捉えるのは不可能!というくらい奇妙で不穏な空気を感じる作品を残しています。



さて、今回は前回に引き続き“ワンコイン文庫”について。



前回は文庫の価格の決め方を調べた結果、様々な要素を考慮するが、ページ数と部数によるところが大きい、ということがわかりました。


調査している時に、380円〜420円くらいの文庫(短編作品)に最近の著名作家の作品がでてこないので、

もしかしたら短編・中編を書き続ける作家が減っているのか?

または、作家はキャリアを積むにつれて長編に移行してしまい、短・中編を書かなくなってしまうのか?

というような疑問を持った、ということを前回のエントリーの最後に書きましたが、


よくよく調べてみたらそんなこともありませんで、ちゃんと最近の作家の作品にもそのくらいの価格の文庫はあるし、大物作家でも短編集という形で、短編小説を書いていました。


ただ、単行本が出ているのに文庫化されていない、というようなことが、若い作家の作品を中心にちらほらありまして、そこのところを今回は書こうと思います。


純文学系の賞を受賞した作品が全部文庫化したら、“ワンコイン文庫”は飛躍的に増えるでしょうね。



☆文庫化される本とされない本


この違いは何なのか?ということを探るべく、今回も電話取材をしてみました。



新潮社(文庫編集部)
「あまりに難解なものや時節に合わないものは文庫化しない」

一般的に、あまり難しすぎる内容のものや、時期はずれなものは文庫化しないそうです。ただ、読者の方から“この本を文庫化してほしい!”といった声が多くあるそうで、その声によって実際に文庫化された作品が魚雷艇学生』(島尾敏雄をはじめ何作かある、とのこと。

魚雷艇学生 (新潮文庫)

魚雷艇学生 (新潮文庫)


早川書房(広報の方)
「文庫は最後の発行形式なので、長く残るものを」

単行本は文庫より発行部数が少ないため、ターゲットをある程度絞って刊行するが、文庫は発行部数が多いため、より一般的な内容が求められる、とのこと。
また、文庫は最後の発行形式なので、長く残るモノを、という意識でお仕事をされているそうです。
単行本発売から文庫発売の期間は2〜3年。
7、8年前は3年で文庫化、というのが出版界の常識だったようですが、最近は各出版社ごとに文庫化までの期間は違ってきていて、早川書房さんの本でも1年半ほどで文庫化されたものもあります。テレビドラマ化、映画化された作品は特にその傾向があるそうです。

読者の声によって文庫化された作品は思い当たらないが、読者の声によって復刊された作品はあるそうです。(『拷問者の影』ジーン・ウルフなど)SF作品で有名な早川書房さんですが、SF小説の読者は特に熱心な方が多い、とのことでした。

拷問者の影(新装版 新しい太陽の書1) (ハヤカワ文庫SF)

拷問者の影(新装版 新しい太陽の書1) (ハヤカワ文庫SF)

祥伝社単行本編集部(元文庫本編集者の方)
「売れ行きや時期を見て文庫化」

文庫化の詳しい条件については秘密、とのことでしたが、売れ行きと時節に合うかどうか、という点は考慮するそうです。
ノンフィクション作品などは、単行本発売当時は本の内容と世間の関心が合っていなくても、文庫化のタイミングで、うまくマッチすることもあります。

読者の声をお聞きしたところ、文庫化を望むというよりは、続編を望む声が多いそうです。




電話をするまではこれほど多様な回答を得られるとは思っていませんでしたが、出版社によって、文庫化する作品の基準は様々なようです。


それに、読者の声ってやはり大きいんですね。。。


僕もモノを書いている人間のはしくれとして、改めて読者の方は大事にしなきゃ、と思った次第です。

さて、2回にわたって

■文庫本の価格の決め方
■文庫化する本の決め方





について書いてきましたが、次回は“ワンコインで買えるオススメ文庫”について書こうと思います。



ではでは。。